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─ 現代美術について

現在、いわゆる現代美術と呼ばれる美術の始まりは写真の発明がきっかけです。それまで絵画の重要な役割だった、人の姿や出来事を記録する役割は写真が担うようになりました。その結果、画家たちは対象物を正確に描写する必要が無くなりました。まずそれを実践して見せたのがモネなどの「印象派」(1984年―)で目に見える物は光の集合体と捉えて絵画を制作しました。その一方、同時代に人の精神性を絵画にしたのがギュスターブモローやラファエロ前派などの「世紀末象徴主義絵画」(1860年頃―)で、実際にはあり得ない幻想的なモチーフを描きました。その後、前者の潮流は形状や色彩の探究する抽象絵画に、後者の流れはマグリットやダリなどの「シュルレアリスム」(1924年―)を起点とする絵画の意味論の探究に続いてゆくものと考えられます。

抽象絵画とは物の形を写すのではなく、画家の感覚や感性を画面に表す事です。一般的に抽象絵画の代表と思われているピカソのキュビズムは正面から見た像と横から見た像を一つの画面に描いたもので、完全抽象とは言えません。完全抽象はニューヨークの喧騒を幾何学的に描いたモンドリアンや純粋な面と線とで画面構成を行ったカンディンスキーからです。その後は、形体を失くし子供の落書きの様に描く絵画の意味論的要素も包含した「アンフォルメル」(1945―)や行為の結果が絵になる「アクションペインチング」(1947―)、視覚効果を利用した「オプティカルアート(1965年頃―)表現を極度に単純化した「ミニマルアート」(1965年頃―)などが生まれました。

 “絵画の意味論の探究”は当初は既成の芸術的価値を否定する「ダダ」の運動から始まりました。その流れはフロイトの心理学の影響を受けて、無意識下の真理を表現しようとした『シュルレアリスム』へと続きます。この運動の過程でマグリッドの「これはパイプではない」と題した絵画やデュシャンが既製品の便器にサインしただけの「泉』(レディイメイド)が発表されたました。この考え方の先に漫画や商品パッケージを作品にした「ポップアート」1958年頃―」が在るものと考えられます。また芸術作品の意義は物質にあるのではなく、それを生み出すまでの思考過程にあるとする「コンセプチュアルアートが生れ、さらに行為を芸術とみなす「ハプニング」(1961年頃―)や「パフォーマンスアート」などが行われました。  この様に美術のボーダーラインを探す様な試行錯誤が現代美術であり、美術の概念を規定する上でも必要であったとも言えます。そしてボーダーラインぎりぎりの芸術のことを“前衛”または“アバンギャルド”と呼びます。

文責:徳田安孝

オーナー

とくだ やすたか

( 徳田医院院長/医学博士 )